腫瘍性疾患(皮膚腫瘍)
について

腫瘍性疾患のイメージ写真

皮膚に生じた「できもの」を皮膚腫瘍と言います。腫瘍とは体の組織の一部が異常に増殖したもので、良性と悪性があります。良性腫瘍としては粉瘤、脂肪腫、母斑細胞母斑、脂漏性角化症などがあります。良性腫瘍は放置しても、基本的に生命にかかわるようなことはありません。一方の悪性腫瘍はいわゆる「がん」と呼ばれるもので、これは死に至る可能性もあるものです。ただし、一見しただけでは「できもの」が良性か悪性かは判断がつきにくいものですので、早期に検査することが重要です。気になることがありましたら、なるべく早めにご相談ください。

以下のような症状がみられましたら、お早めにご受診ください

  • 皮膚のできもの
  • 皮下のできもの
  • 以前からあったできものが大きくなってきた
  • 黒い/赤いしみができた

主な疾患について

粉瘤

粉瘤はアテロームとも呼ばれ、良性の皮膚腫瘍の中で代表的なもののひとつです。皮膚の下にできた袋状のものに角質等、いわゆる垢が溜まって発生します。中央に黒い点のような穴があってドーム状に隆起しており、強く圧迫すると臭いカスのようなものが排泄されます。

良性のため治療せずそのままにしていても問題はありませんが、放置していると大きくなったり(まれに10cm以上になることもあります)、また粉瘤がつぶれて細菌に感染し、炎症を起こしたりすることもあります(炎症性粉瘤)。

粉瘤の主な種類として、もっとも多く見られるのが表皮嚢腫です。毛穴の皮膚がめくれて袋状の嚢腫が生じ、そこに垢がたまることで発生します。他に頭部にできる頻度が高い外毛根鞘嚢腫、同時に複数生じる多発性毛包嚢腫などがあります。

粉瘤は放置した場合、徐々に大きくなりいずれ感染を生じるため、傷跡をなるべく残さないで済むよう早期の手術をお勧めします。手術は局所麻酔を使い30分程度の外来手術で、1週間ほど後に抜糸を行います。稀に粉瘤の嚢腫壁が悪性化していることがあるため、手術で切除した腫瘍は病理検査を行い、悪性所見の有無を確認します。また炎症性粉瘤が起き、悪化してひどく化膿した場合は、抗菌薬による薬物療法に加え、切開して膿を排出するなどの治療を行います。

脂肪腫

脂肪腫は皮下脂肪の層に発生する、いわゆる脂肪の塊です。被膜に包まれた脂肪細胞の増殖により発生します。柔らかいしこりのようなもので、体のどこにもできるものです。中でも首・肩・背中に多くみられ、まれに筋肉の中にもできますが、その場合は太もも等に多く発生します。

基本的には痛みを伴わず(血管を豊富に含むタイプでは痛みを伴うこともあります)、良性腫瘍なのですぐに治療する必要はありませんが、次第に大きくなり、大きいもので直径10cm以上になる場合も少なくありません。

脂肪腫が大きくなってからの手術は、部位や大きさによって全身麻酔が必要になるなど体への負担や傷跡も大きくなりますので、経過を見つつ、必要であれば外科的切除を行います。また、悪性化する可能性は少ないとされていますが、まれに脂肪肉腫と呼ばれる悪性腫瘍の可能性もありますので、必要に応じて病理検査を行います。

ほくろ

ほくろは医学的名称として、母斑細胞性母斑、色素性母斑、単純黒子などと呼ばれるものです。母斑細胞というメラニン色素を作る細胞が集まって生じたもので、子供のころは平らでも、次第にこの母斑細胞の数が増え、盛り上がってくる場合もあります。

ほくろは基本的には良性腫瘍の一種に数えられますので、治療の必要はありませんが、いわゆる「ほくろのがん」と言われる悪性黒色腫が疑われる場合は検査が必要です。大人になってから急に現れた、急に大きくなってきた、形がいびつである、色素斑の境界がにじんでいる、色むらがある、大きさが6mm以上である、隆起しているといった所見が多く当てはまる場合は小さくても悪性黒色腫という皮膚悪性腫瘍の可能性がありますので注意が必要です。

悪性が疑われる場合、まずはダーモスコピーという診断専用のルーペのような器具で検査します。その上で悪性黒色腫の可能性が疑われる場合には、適切な医療機関(大学病院)に紹介します。悪性黒色腫はごく初期であっても稀に転移を生じることが知られており、また非常に長期間(10年以上)を経て再発することもあるため、その疾患を診療するに値する設備が整っていない医療施設での治療はお勧めしません。先天性でも大きな色素性母斑は将来的に悪性腫瘍を発症する可能性がありえるため、手術で取り切ってしまうという選択肢もあります。良性のものでも見た目が気になるということであれば、手術で切除したり、レーザーによる治療を行ったりする場合もあります。

イボ

イボは、皮膚に生じた隆起性の病変のことを言います。その1つに尋常性疣贅というヒトパピローマウイルスが皮膚の微小な傷から侵入して感染して生じるいぼがあります。とくに子供に多く見られまずが、子供の場合は自然に治ることが多いです。傷のつきやすい手や足底、顔や首などの部位にウイルスが感染しやすいため、イボが現れることが多く、アトピー性皮膚炎のある子供が引っ掻いてしまった傷から発症する場合もあります。接触により感染するため、あまり触らない方が良いです。通常は凍結療法や、ヨクイニンなどの漢方薬で治療を行います。

また加齢性のイボ、医学用語で言う脂漏性角化症は、灰色や黒色の少し盛り上がったほくろのような斑点で、表面ががさがさしており、顔や腕などに多発するものです。これは主に紫外線による肌ダメージにより生じた表皮の加齢変性で、悪性化することはありません。見た目的に気になる場合は液体窒素、レーザー、外科的手術によって除去することが可能です。脂漏性角化症に似た皮膚がんもありますので、徐々に大きくなってきたなど気になる場合には受診をお勧めします。

皮膚がん

上に挙げた悪性黒色腫以外にも皮膚の悪性腫瘍は多くの種類があります。

最も頻度が高いのは基底細胞癌ですが、早期にきちんと治療をすれば命に関わることはありません。しかし、様々な見た目を呈するため、見逃さないように注意をすることが大事です。

有棘細胞癌は基底細胞癌ほど多くは見られませんが、放置した場合に有棘細胞癌になる病変、いわゆる前癌病変がある方は非常に多く見られます。露光部にカサカサした赤みが生じて治らない場合には、前癌病変の1つである日光角化症の可能性があるので、一度受診して確認することをお勧めします。

また、パジェット病という、一見タムシやかぶれにしか見えない悪性腫瘍もあります。外陰部や肛門周囲、脇の下に生じるものであり、初期は「皮膚の赤み」だけが症状のため、その病気のことを知らなければ診断することも困難です。初期に治療をすれば十分完治も期待できますが、一旦病変が進行してしまうと非常に重篤な経過となるため、早めに診断をつけて治療を始めることが重要です。