アレルギー性皮膚疾患
について

アレルギー性皮膚疾患のイメージ写真

人には免疫反応という仕組みが備わっています。これは通常、細菌やウイルスなど人体にとって有害な異物が身体に進入してきた際に、これを撃退するシステムです。この免疫反応が、本来人体にとっては無害な物質や、影響がほとんどない、ごくわずかな量の異物に対して過剰に反応してしまい、自分自身を障害してしまう状態がアレルギーです。

このアレルギーによる反応が皮膚の障害となって現れるものがアレルギー性皮膚疾患で、じんましん、各種のアレルギー性皮膚炎、花粉症、アトピー性皮膚炎などの皮膚トラブルが挙げられます。

以下のような症状がみられましたら、お早めにご受診ください

  • じんましん
  • かぶれ(接触性皮膚炎/金属、植物など)
  • 食物アレルギー
  • 日光アレルギー
  • 花粉症
  • アトピー性皮膚炎

主な疾患について

じんましん(蕁麻疹)

じんましん(蕁麻疹)とは、円形もしくは楕円形の赤い盛り上がりが、皮膚に突然現れるのが特徴です。多くの場合、強い痒みが伴い、チクチクとした感じや熱っぽさを感じる場合もあります。かゆみを引き起こすヒスタミンが放出されることで起きると考えられています。膨疹の大きさは2〜3mm程度のものから手足全体くらいまでと様々で、これらがつながり、地図のような形に広がることもあります。通常は数時間~24時間で消えますが、慢性化することもあります。

原因はよくわかっていない部分もありますが、アレルギー性のもの、非アレルギー性のものがあり、アレルギー性のものでは食物や内服薬などが原因となることがあります。その場合、重篤なアナフィラキシーショックが引き起こされる危険性もあるため、慎重に発生時の状況などを確認することが大切になります。

診療にあたっては、まず問診と視診を行います。じんましんを発症した状況、何か思い当たるきっかけはあるか、発症してからどのくらい経つか、などをお伺いし、皮膚の状態を観察します。食物アレルギーなどが疑われる場合は血液検査を行う場合もありますが、突発的なじんましんの場合には血液検査で原因を特定することは難しいため、患者さんごとにその必要性を判断します。治療としては、抗アレルギー剤を使用します。じんましんは皮膚の表皮(表面)よりも下の真皮部分に問題が起こっているため、この部分までは効果が達しにくい外用薬(塗り薬)ではなく、内服薬(飲み薬)が中心の治療となります(外用薬を処方する場合もあります)。

接触皮膚炎(かぶれ)

一般に「かぶれ」と呼ばれるものは、接触皮膚炎といいます。何らかの金属や植物などの特定の物質が皮膚に接触することで発症するものです。主にアレルギー性と刺激性の二つに分けられ、アレルギー性の接触皮膚炎の原因となる物質としては、ウルシ、イチョウなどの植物、さらに野菜や果物にも原因となるものがあります。またアクセサリーやコインなどの金属類、樹脂やゴム、外用薬や目薬などでもかぶれる場合があります。

たとえば金属が原因となるものについては、金属アレルギーと呼ばれます。通常アレルギーは、たんぱく質をアレルゲン(原因物質)として発症します。金属アレルギーでは、金属から溶け出した金属イオンが皮膚を経て、体にあるケラチン等と結合し、アレルゲンとなるたんぱく質に変わることによって発症します。夏に金属アレルギーが発症しやすいのは、汗により金属イオンが溶け出すためです。

症状としては痒みを伴い、ヒリヒリする、赤くなる、ブツブツとしたものが出る、といったものもみられます。また引っ掻くと水ぶくれになり、ジュクジュクした状態になる場合もあります。

治療にあたっては、かぶれの原因となっている物質が何かを特定することが重要になります。原因がわかっていない場合は、生活環境や仕事環境、使用している薬についてなどの問診を行い、必要に応じてパッチテスト(原因と疑われる物質を皮膚に貼付して反応を見る検査)等の検査を行って、原因となる物質を特定していきます。原因物質がわかれば、その物質との接触を断つようにし、さらに症状に応じてステロイド外用剤や抗アレルギー剤内服などによる薬物治療を行います。

食物アレルギー

特定の食べ物がアレルゲンとなって発症し、じんましんや痒みなどの皮膚症状に加え、咳や喘鳴(呼吸時にヒューヒューという音がする)などの呼吸器症状が見られるのが食物アレルギーです。この他、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状や、瞼や唇などの粘膜に腫れなどが現れる場合もあります。さらに気道の粘膜が腫れると、窒息という恐れもあります。

原因となりやすい食べ物は年齢によって傾向があり、乳児期は鶏卵や乳製品、小麦などが、また学童・成人期は甲殻類、魚介類、そば、小麦、果物、ピーナッツなどが食物アレルギーの原因になりやすいと言われています。また子供のころに食物アレルギーがあっても、大人になるにつれて耐性を獲得し、アレルギーが出にくくなると考えられていますが、食べ物によっては耐性を獲得しにくいものもあります。

食物アレルギーの治療では、じんましんなど皮膚に現れた症状に対しては、抗アレルギー剤内服や抗ヒスタミン剤外用を行います。一方、食物アレルギーで注意しなければならないのがアナフィラキシーショックです。これは全身のショック症状や、血圧低下、呼吸困難、意識消失等をきたし、命にかかわる場合もあるのです。アナフィラキシーショックの症状を呈した場合、速やかなアドレナリン筋肉注射や、ステロイドの静脈注射が必要となります。発症のリスクがある患者さんには、緊急時への対応として、エピペン(アドレナリン自己注射)を処方する場合もあります。

危険のあるアナフィラキシーショックを引き起こさないためにも、自分がどんな食物に反応するかを調べておくことが非常に大切です。食物アレルギーの疑いがある場合、当院では、問診や血液検査、パッチテストなどで、原因となる食物を特定していきます。負荷試験など、より慎重な検査が必要な場合には、その検査が可能な高度医療機関を御紹介します。子供さんの食物アレルギーでは、原因食物を完全には除去しない方が良いこともあるため、患者さんごとに対応方法をご相談の上、指導していきます。その際は、栄養が片寄ってしまわないよう注意を払います。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、顔や首、肘の内側や膝の裏などの部位に(年齢によって異なります)、左右対称で痒みのある湿疹ができ、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴の皮膚炎です。乳幼児や小児の他、稀に20歳を過ぎた成人も発症する場合があり、大人の場合は約6カ月以上、上記のような症状が続くのが診断の目安となります。

アトピー性皮膚炎は、皮膚に備わったバリア機能(外界の刺激や乾燥から体を守る機能)が様々な理由で低下し、そこにアレルギーを起こす様々なものが体に入ることで、アレルギー反応を起こすと考えられています。

アトピー性皮膚炎は進行していくと、ぶつぶつとした痒疹の状態や、皮膚が厚くなる苔癬化と呼ばれる状態になり、痒みも強くなっていきます。ここでまた掻いてしまうと、皮膚のバリア機能がさらに低下し、皮膚炎が悪化するという悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。そのため治療では、まず炎症の状態や痒みなどの症状をコントロールすることが重要になります。

症状のコントロールには適切な薬物療法を行っていきます。使用するのはステロイド外用剤やタクロリムス外用剤、デルゴシチニブ外用剤やジファミラスト外用剤などの塗り薬で、痒みが強い場合には抗アレルギー剤の内服を併用することもあります。塗り薬は痒みが止まったからといってすぐ止めるのではなく、症状を見ながら徐々に回数を減らしたり、定期的に塗って皮膚の良い状態を維持したりと、専門医の判断を元に治療していくことが重要です。また重症化が進んでしまった場合は、慎重に判断した上、免疫抑制薬や生物学的製剤(デュピルマブ/かゆみをブロックする注射薬)を用いる治療が行われる場合もあります。

こうした薬物療法と並行して、適切なスキンケアをしていくことも大切です。皮膚を清潔にし、保湿剤で皮膚の乾燥を防ぐことが重要です。頑張って治療をしても、スキンケアを怠ると炎症は容易にぶり返してしまいます。炎症を抑えると共に、スキンケアをきちんと行うことがアトピー性皮膚炎の治療においては非常に重要です。

更に、通常の治療を行ってもなかなか良くならない方の場合には、悪化因子を調べて取り除くことも大切です。乳幼児では食物が関係していることがあります。但し、やみくもに血液検査を行ってそれを元に判断するのではなく、実際にその食物を摂取して悪化するかどうかを確認することが大事です。血液検査が陽性であっても、摂取して問題ないことも度々みられます。また、汗で悪化する方も多く、睡眠不足など生活リズムの乱れや精神的ストレスも悪化の原因となることが多いです。汗をかいた後は早めにシャワーを浴びたり、ちゃんと睡眠を取ったりといった日常生活での注意点にも気をつける必要があります。

アトピー性皮膚炎は治療に時間のかかる病気です。当院では患者さんに寄り添って、皮膚が良い状態をなるべく長くしていき、痒みのない生活が送れることを目指します。疑問や不安、あるいは治療法についてなど、なんでもお気軽にご相談ください。